海を学び・楽しむ☆ 大人も子どもも魅了する「海がテーマの絵本」5選
青くて広い海。果てしなく深くて、その先には神秘的な世界が広がる。その美しさや広大さに多くの人が心惹かれます。大人も子どもも関係なく、海には人を魅了する力があるみたい。今回は、海を楽しむ、海を学べる、海で癒やされる……そんな多彩な絵本を5冊紹介します。
『ウミガメものがたり』鈴木まもる(童心社)
物語の最初は母ガメの産卵場面。生まれたばかりの赤ちゃんガメの大海原への旅が始まるのです。美しく描かれている海の世界ですが、ちっとも平和ではありません。ときには残酷な場面も……。ウミガメは、弱肉強食の世界のなかで懸命に生きるのです。
ウミガメの行く手を阻む障害物のなかには、人間が生み出したものも少なくありません。海洋プラスチックを誤飲したり、船のスクリューにぶつかったり。『ウミガメものがたり』はウミガメだけでなく、人間を含めたいろんな生き物が関わっています。困難を乗り越えながら、ウミガメが成長する姿をぜひ見ていただきたいです。
『海』加古里子(福音館)
海の生き物、海底の開発について学べる絵本です。砂浜の下はどうなっているのか、断面図で丁寧に説明されています。人間の体と比較して、生き物や海藻の寸法が記されているのでイメージしやすい。ページをめくる度にどんどん水深が深くなります。巻末には各ページの詳しい解説と索引がありますので、大人でも十分勉強になります。海にまつわる情報がぎゅっと詰まった一冊です。
絵本作家の加古里子さんの作品といえば『だるまちゃんシリーズ』や『からすのパンやさん』が有名ですが、自然科学に関する絵本も多いです。わが家には『海』のほかに『地球』も本棚に並んでいます。絵本ではありますが、大人でもその情報量にびっくりするはず。
『プラスチックのうみ』ミシェル・ロード(小学館)
物語をミシェル・ロードさんが、イラストをジュリア・ブラットマンさんが手がけた絵本。人間が消費したプラスチックごみが、海に暮らす生き物にどんな影響を及ぼしているのか、綺麗な海を取り戻すにはどうしたらいいか。一緒に考えませんか?
アメリカで刊行されたこの絵本。日本語版を出版するにあたり、翻訳に参加したのは当時5歳の川上拓土くんです。まっすぐな言葉で訳されているからこそ、心にまっすぐ刺さります。ぜひ親子で読んでほしいです。環境問題がテーマの絵本ですが、彩り豊かなイラストなので暗い気持ちにならず読み切れます。巻末には、海洋プラスチック問題の解説が載っていますよ。『海のものがたり』ヘレン・アポンシリ(化学同人)
押し葉にした海藻や海辺の植物で描かれた絵本。押し花アーティストのヘレン・アポンシリさんが丁寧に作り上げたアーティスクティックな作品です。イラストでも写真でもなく海藻の押し葉。独特の風合いが個性的で見応えたっぷり。海の生き物について楽しく知ることができます。
押し葉だけでなく、言葉からも彩りが感じられるのもポイントです。「つがいのタツノオトシゴは毎日いっしょにダンスします」といった可愛らしい表現で海の生き物を紹介しています。その一方で「海の星」の異名をもつヒトデが「獲物を襲う、おそろしい捕食者なのです」とちょっぴり怖い表現も。表現力豊かな文章で心躍ります。
『海からの風』葉祥明(晶文社)
葉祥明さんが綴る美しいエッセイ。綺麗な海の描写と、悩んでいる人の背中を押してくれる言葉の数々に勇気をもらえます。人生と海を重ねる表現がとても上手で、心にピタッとはまるんです。
「海からの風」が発行されたのは2011年8月。2011年3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、大津波で多くが失われたばかり。そんなときに、海が題材のエッセイを出版するか迷ったそうですが「こんな時期だからこそ!」と制作の意志を固めたそうです。
子ども向けというより、大人向けの絵本かもしれませんが、子ども時代から本棚にあれば心のより所になりそうな絵本です。葉祥明さんは、子ども向けの作品もたくさん制作されているので、ぜひ親子でお気に入りの絵本を見つけてくださいね。
海の絵本で海をもっと身近に
海を学ぶためにも、海の世界を楽しむためにも絵本はステキなアイテムです。読むのもいいし、飾るだけでもいい。海に行きたいけれど行けない、そんなときに絵本を開くのもおすすめ。絵本は絵や言葉など、子どもでもイメージしやすいように創意工夫がされています。もちろん大人も絵本だからと侮るなかれ。細かい描写に注目したり、絵本が制作された背景を調べたりすれば新しい発見がありますよ。ぜひお気に入りの一冊を見つけてくださいね。