輸血は不要!? 1897年に「海水は血液の代わりになる」と証明したルネ・カントン

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大失血したときには輸血するのが当たり前なイメージですが、1897年に「血の代わり海水を注入しても生命を維持できる」ことが証明された歴史があります。タラソテラピーの父とも呼ばれる生理学者ルネ・カントンが、犬の血液と薄めた海水を入れ替える実験をしたのです。今回は、カントンが行った3つの段階にわたる実験を紹介します。

1897年、「海水が血液の代用として機能する」と公衆の面前で証明

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第一の実験では、犬(5kg)の血液を抜き取り、血液と同じミネラル濃度に調整した同量の海水を血管に注入しました。犬の血液の一部を海水に入れ替える実験です。注入した海水は3.5リットルに達しました。実験後は犬の体温が下がり、腎臓の排泄機能が低下し弱っている様子でしたが、すぐに体温が上がり始めたそうです。内臓の機能も復活したようで、実験から5日後には元気になったといいます。

第一の実験の結果を通して、カントンは血液と海水を置き換えても生命活動を維持できること。維持するだけでなく、犬が元気になったことを証明したのです。実験は一般公衆の面前で行われ、多くの人に強烈な印象を残しました。

大量失血でも海水を注入すれば血液を再生できる!?

英字新聞とカメラ

第二の実験も1987年に実施されました。使用されたのは第一の実験の犬よりも大きい10kgの犬です。血液を極限まで瀉血(血液を一定量取り除くこと)してから、海水を注入するという過酷な実験。犬が失血死するかもしれない厳しい実験にカントンは挑みました。

犬の太腿静脈から425gを4分間かけて瀉血。その後、11分間に532ccの海水を注入しました。人間で換算すると、体重60kgの人から約2.5リットルの血液を抜いたことになります。犬はそれだけの大量失血をしたのに呼吸をしていました。海水注入後は衰弱していたものの、5日を過ぎたころから回復。なんと8日後には元気な様子を見せたそうです。公開実験は世界中の新聞で報道され、カントンと犬は注目の的となりました。

第二の実験によって、カントンは「大量失血でも海水を注入すれば生命維持できること」を証明しました。海水は血液機能の再生をもたらすともいえます。実験後、犬は元気に過ごしていましたが、5年後に交通事故で亡くなってしまいました。事故に遭わなければ、もっと長生きしたことでしょう。

あらゆる動物において「海水が有効」という結果に

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第三の実験では、いろんな種類の動物が用いられました。哺乳類(犬、うさぎ)、両生類(カエル)、爬虫類(トカゲ)、魚類(テンチ=ドクターフィッシュ)、鳥類(ハト)……。カントンは、あらゆる動物に海水が有効かを実験したのです。

とても繊細な細胞とされる白血球。白血球はどのような人工溶液でも適応できずに死滅するんだとか。カントンは、各動物から血液を採取。血液を海水で希釈して顕微鏡で観察しました。すると、繊細といわれる白血球が血中と同じように生きていたのです。しかも、特定の動物だけでなく、どの動物の白血球も生きていた!

第三の実験で、「繊細な白血球でさえ海水中で生きることができる」と証明できました。さらに、あらゆる動物で好ましい結果がでたのです。カントンやカントンの実験に感銘を受けた医師たちは、この実験を踏まえ人の治療にも海水を活用。次々と病で苦しむ人を治したそうです。

輸血よりも海水を使ったほうが安全なのでは?

アルファベット

血液が原料になっている医薬品をすべて「血液製剤」いいます。輸血の際に用いられることが多いのは、血液製剤のなかの「輸血製剤」。大量失血に限らず、貧血のときなどにも輸血が勧められます。でも、輸血は気軽に受けるべきではないのかもしれない。



輸血には危険な面があると聞きます。体内に他者の血が混ざることで、自分の血とのケンカが起こるのです。人間がもつ免疫反応が働き、免疫細胞が攻撃を始めます。神経系、内分泌系、内臓系などあらゆるところに悪影響をもたらすそうです。輸血された患者は高熱で苦しみ、皮膚が赤黒くなったり下血したり。多臓器不全で亡くなる可能性があるのです。実際に、輸血の副作用で亡くなる人は少なくありません。

「血液型が同じなら大丈夫」と思われがちですが、4種類の血液型A、B、AB、O型はざっくりとした分類で、分類方法もいろいろあるらしい。血液型は指紋と同じで、唯一無二のもの。他人とまったく同じ血液型は存在しないそうです。それならば、どの動物でも有効な結果がでた海水を用いる研究を進めてほしい。輸血よりも安全に生命維持できる可能性があるなら、多くの人が望む研究なはずです。

海水が医療面で積極的に活用されますように

古書を読む女性

海水に含まれているミネラルの組成と血液・体液の組成はとても似ています。海水と人間は相性がいい。わたしたち地球の生命体は海から生まれたのですから。陸に上がるとき、海を血液や体液にとり込んできた人間の治療に、海水を使わないのはもったいない。輸血にリスクがあるなら尚更です。宗教上の理由で輸血ができない人もいます。大量失血したとき、輸血以外の選択肢が増えることで安心する人はきっといるはずです。

日本では、タラソテラピー(海洋療法)といえば、美容やリラクゼーションとして用いられることが多いですが、今後は医療面での活用を期待しています。海から生まれた自然療法として、当サイトでは海の情報をお届けしていきます。

参考文献

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南條 ゆみ

大阪出身、東京在住。事務職を経てフリーランスライターの活動開始。食や健康の記事を担当するなかで、体にやさしい暮らしについて模索を始める。自身の体調不良と向き...

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