医師、王様、詩人、哲学者、スポーツ選手…偉人も魅了した「タラソテラピー」の歴史を紐解く

海の資源を利用して心身を健康へと導く療法「タラソテラピー(海洋療法)」。海外では、紀元前からある療法だそうですが、日本に導入されたのは1882年で世界に比べて歴史は浅い……。今回はタラソテラピーの歴史を紐解きます。偉人たちにまつわるタラソテラピーのエピソードもご覧ください。

※歴史に関して書籍によって意見が分かれる箇所もありますので、ご了承ください。

タラソテラピーの歴史は3500年前に始まった

もともとはギリシャ語のタラッサ(Thalassa:海)テラペイア(Therapeia:治療)とを組み合わせた造語。日本語では海洋療法と訳されています。

タラソテラピーの起源は3500年前と考えられており、戦争で負傷した兵士たちが温海水で傷を癒やしたのが始まりといわれています。当時はまだ「タラソテラピー」と呼ばれていませんが、すでにバビロニア王国では海水浴が日常的な習慣だったという資料を見つけました。


紀元前400年代、偉人たちがタラソテラピーに注目する

紀元前400年頃から、偉人たちがタラソテラピーの威力に気づき始めました。紀元前480年にはエウリピデス(アテネで活躍したギリシャ悲劇の作者・詩人)が「海は人間の病気を治療する」という言葉を残したそうです。

紀元前420年には、西洋医学の祖とも称されるヒポクラテス(古代ギリシャ医師)が海水による温浴法を提唱しました。治療として海水の外用(海水浴)内用(飲料)を試みたとされています。プラトン(古代ギリシャ哲学者)も温めた海水を利用する治療を受けていたそうです。

16世紀以降、タラソテラピーの活用が進む

アンブロワーズ・パレ(フランス医師)が海水のもつ温熱・収斂・乾燥・化膿止めなどの特性に着目。1578年にはアンリ3世(フランス国王)が海水浴によって皮膚炎を治したという記録が見つかっています。さらに、W・フロイヤー(イギリス医師)が海水を用いた入浴療法を研究し、1697年に「イギリスにおける温冷海水風呂の利用について」という論文を発表しました。


1750年、タラソテラピーが医学的に検証された

民間療法として広まっていたタラソテラピーですが、医学面での検証が始まりました。1750年にリチャード・ラッセル(イギリス医師)が海水入浴療法に加えて海水の飲用効果も論文で発表胃腸障害や関節障害の治療における海水の飲用海産物を食べることの重要性を主張しました。

18世紀以降、タラソテラピー施設が増加していった

1778年、ノルマンディー(フランス)のデイエップに海洋療法センター「動く浴槽」が設立。フランスではル・クロワジック、ロスコフと続々と施設が建てられました。1849年には、タラソテラピーが国立科学アカデミーによって「海洋療法には医学的効果がある」ことが認められました。

1867年、「タラソテラピー」と呼ばれるようになる

ボナディエール博士(フランス医師)によって海洋療法に「タラソテラピー」という名がつけられたのが1867年。タラソテラピーの医学的研究が盛んだったフランスではタラソテラピーが広がっていきます。


日本にタラソテラピーが導入>>

南條 ゆみ

大阪出身、東京在住。事務職を経てフリーランスライターの活動開始。食や健康の記事を担当するなかで、体にやさしい暮らしについて模索を始める。自身の体調不良と向き...

プロフィール
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