水質汚染の約70%は生活排水。ビーチクリーンは対症療法にすぎない
海辺の清掃活動「ビーチクリーン」は海を綺麗にする素敵な活動です。しかし、ビーチクリーンだけで海洋汚染の問題を解決するのは難しい。ビーチクリーンは、海辺を美化するための対症療法に過ぎないのです。では、わたしたちに何ができるのか……一緒に考えてみませんか?
ゴミが海辺に辿り着くルートを考える
海辺のゴミはどこから来たのか。海辺で散歩していた人がポイ捨てしたり、漁師が漁業用の網を落としていったり。いろんなルートが考えられます。でも、海の近くにいる人だけの問題ではありません。
街で捨てられたごみやごみ処理場の粉塵が、風で舞い上がって川へ落ちて海に辿り着く。そんなふうにして、大量のごみが海に流れてくるそうです。ビーチクリーンでごみを取り除くだけでは、海の汚染を止めることはできません。なぜなら、拾うごみの数より、捨てられるごみのほうが圧倒的に多いからです。
水質汚染の約70%が生活排水!?
大きなごみは回収しやすいですが、小さいごみは見つけるのすら難しい。現在、生活排水から流れ出るマイクロプラスチック(5mm以下の小さいプラスチック)が問題になっています。
台所、洗面台、洗濯機の排水口から流れる排水にはマイクロプラスチックが含まれています。下水処理施設でマイクロプラスチックは除去されますが、除去率100%とは言い切れません。数%が海へ流れていると想像するのは難しくないでしょう。海の近くに住んでいない人も、海洋汚染問題の当事者なのです。
ビーチクリーンだけでは解決できない
ビーチクリーンは海辺を綺麗にするための意義ある活動です。ビーチクリーンによって、海に流れるはずのごみの量を減らすことができます。しかし、ポイ捨てだけでなく、生活排水による汚染が加わるとビーチクリーンでは太刀打ちできません。もちろん、無意味ではありませんが、ポイ捨て、廃棄されたごみ、生活排水、工場排水など、海を汚す問題は山積みなのです。
海を守るためには、ひとりひとりの意識改革が急務
人間ひとりの力では、すべての問題を解決するのは難しい。でも、だからといって無視できる問題ではありません。人間が捨てたプラスチックごみが、海を巡って魚介類や塩となってわたしたちの食卓に戻ってくるルートができつつあります。少しでも汚染のスピードを遅らせたり、汚染の原因になるものを取り除いたり対策をするべきなのです。
2020年、日本ではレジ袋の無償配布が禁止。商業施設でのレジ袋消費量は減りました。効果はあったかもしれませんが、家庭でのポリ袋購入量が増えたという人もいるでしょう。 やはり、ルールを変えるだけでなく、根本的な意識改革をしなければごみを減らすのは難しそうです。
日用品を見直して海にやさしく暮らす
プラスチックの食器や調理器具を使っていませんか? 食器類は調理をしたり洗ったりすることで、摩耗していきます。その結果、台所のシンクから生活排水とともにプラスチックが流れてしまうのです。化学繊維の衣服も同様です。洗濯するときに発生する繊維くずはプラスチックの一種。洗濯台から流れる生活排水と一緒にプラスチックが流出します。
プラスチックの歴史はまだ100年程度。海に流れたプラスチックが完全分解されるまでに何年かかるのか正確に知ることはできません。しかし、理論上は、完全分解には数百年以上かかると考えられています。プラスチックを減らすことは一般家庭でも可能です。少しずつ、身の回りの日用品を見直しましょう。
海から生まれた「塩」を上手に活用
プラスチックの食器や調理器具、化学繊維の衣服の問題は、自然素材のものを選ぶことで対策できます。そのほか、合成洗剤をやめて石けんにすれば環境負荷を抑えられます。身の回りのものを注意深く選択する。小さな積み重ねが環境にやさしい暮らしに繋がるのです。
わたしは洗顔料やシャンプーはほとんど使いません。スキンケアは塩やニガリを活用しています。塩は海から生まれた食品です。環境への負担が少ないとされる石けんよりも、塩のほうがナチュラルな存在といえるのではないでしょうか。塩はエコの最先端かもしれません。この機会に、海にやさしい暮らしを始めてみませんか? ひとりひとりの行動が、未来へ繋がります。