動物園のエサから考える動物と塩の関係とは? 動物たちの塩不足対策をチェック

シマウマ(草食動物)とライオン(肉食動物)

人間には塩が必要不可欠とサイトでは紹介していますが、人間に限った話ではありません。ほかの動物たちにとっても塩は生きるために必要。今回は、動物園のエサから動物と塩の関わりを考えます。

草食動物は塩を補わないと生命の危機に陥る!?

シマウマの群れ

肉には塩が含まれていますが、草食動物が食べる植物には塩はあまり含まれていません。そのため、食事だけでは塩は足りない状態です。野生の草食動物は、塩などのミネラルが豊富な泉や土を「塩なめ場」として活用。足りない塩を塩なめ場で補います。野生の草食動物はミネラルを求めて何日もかけて移動することもあるそうです。一方、塩なめ場のない動物園の草食動物は、塩やそのほかのミネラルなどを練って固めた「鉱塩(こうえん)」などを与えられます。

※動物の食べるエサや塩の情報については、たばこと塩の博物館「第43回夏休み塩の学習室 動物にきこう! 塩のひみつ2022」パンフレットより引用しています。

◆シマウマが食べるもの・エサ
野 生:草が主食で木の葉も食べる。

動物園:1日に干し草3~5kg、生の牧草10kg、固形飼料0.8kgなどを食べる。
塩の量:鉱塩を自由になめる(6カ月で5kg、1日約30g)。固形飼料にも少し塩が含まれる。

◆マルミミゾウが食べるもの・エサ
野 生:木の皮、葉、果実などを食べる。

動物園:1日に干し草34kg、固形飼料3kg、木の葉30kg、サツマイモ0.5kg、ニンジン2kg、リンゴ1.5kg、バナナ1kg、パン3kgなどを食べる。
塩の量:炭酸カルシウム、海藻粉末、米ぬか、油かすを加えた鉱塩(1日90g)

◆キリンが食べるもの・エサ
野 生:木の葉(おもにアカシア)や小枝などを食べる。

動物園:1日に青草10kg、干し草2kg、カシの木の枝葉5kg、固形飼料6kg、サツマイモ500g、ニンジン180g、バナナ180g、配合飼料750gなどを食べる。
塩の量:鉱塩を自由になめる(4カ月で5kg、1日約40g)。固形飼料にも少し塩が含まれる。

◆ジャイアントパンダが食べるもの・エサ
野生:竹やタケノコが主食。ときどき鳥や小型の哺乳類を食べることもある。

動物園:1日に竹やタケノコ20kg。ほかにパンダ用のトウモロコシだんご、ミルク粥、リンゴ、サトウキビ、煮たサツマイモ、ナツメなど。
塩の量:パンダ用ミルクに塩を混ぜて(1日約1g)飲む。

肉食動物は狩りが成功すれば塩の心配なし!

2頭のライオンが並んでいる様子

肉食動物はほかの動物を捕って食べます。動物の体には人間の体と同じように血や骨などの塩が含まれます。そのため、肉食動物は食事以外で塩を摂る必要はありません。獲物を食べられれば塩には困らないのです。動物園でもエサは肉が中心なので、塩を与えることはないそうです。

※動物の食べるエサや塩の情報については、たばこと塩の博物館「第43回夏休み塩の学習室 動物にきこう! 塩のひみつ2022」パンフレットより引用しています。

◆ライオンが食べるもの・エサ
野 生:狩りをしてヌー、インパラやシマウマなどの草食動物を食べる。

動物園:馬肉6~8kgや鶏の頭3kgなどを週3回、ウサギを週1回食べる。ほかに牛の骨なども食べる。
塩の量:とくに食べない。

◆トラが食べるもの・エサ
野 生:捕らえられる動物はなんでも食べるが、シカやイノシシなどの大型の草食動物をよく食べる。

動物園:1日に馬肉4~7kg、鶏の頭1.8~2.4kg、週1回ウサギ、おやつとして牛の骨などを食べる。
塩の量:とくに食べない。

◆キツネが食べるもの・エサ
野 生:野ネズミ、野ウサギ、果実などを食べる。肉食に近い雑食。

動物園:1日に馬肉25g、鶏の頭5個、蒸したサツマイモ85g、ニンジン20g、リンゴ160g、ドッグフード30gなど。
塩の量:とくに食べない。

牧場で暮らす牛たちも塩をなめている

牧場で快適に過ごす牛

塩は牧場で暮らす牛や馬にも与えられています。牧場にある牛小屋や草原に白や茶色のブロックを見たことはありませんか? このブロックは鉱塩です。動物たちは鉱塩をなめて塩を摂ります。

草食動物は塩をもらえないと、だんだん体重が減って食欲がなくなるそうです。動物にとって塩は重要で、塩不足の乳牛はミルクを出が悪くなります。家畜(牛、馬、羊など)は草食動物なので、飼料に塩を添加したり塩分を与えたりする必要があります。塩は畜産業とも密接な関係があるのです。

人間も草食動物も肉食動物も塩分濃度は同じ

シマウマ(草食動物)、ヒト、ライオン(肉食動物)

1日に必要な塩の量は人間が10g、鶏は0.8~1g、ヤギ20g、馬30~40g、牛80g、カバは500gといわれています。必要な塩の量は動物によって異なりますが、血液などの体液の塩の濃さはどの動物でも同じ約0.9%です。人間もヒトという動物で草食動物や肉食動物と同じ濃さをキープしているのです。

野生の草食動物が塩なめ場を求めるように、本能的に動物は塩が必要なのをわかっているのでしょう。塩は生命を維持するために重要な役割を果たします。減塩を勧める風潮がある現代ですが、塩不足は生命を危険に曝す可能性があるのです。人間も適度に塩を摂る必要があるので、過度な減塩には注意してくださいね。

参考文献

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たばこと塩の博物館「第43回夏休み塩の学習室 動物にきこう! 塩のひみつ2022」,2022年
塩とたばこの博物館 公式サイト>>



南條 ゆみ

大阪出身、東京在住。事務職を経てフリーランスライターの活動開始。食や健康の記事を担当するなかで、体にやさしい暮らしについて模索を始める。自身の体調不良と向き...

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