医師、王様、詩人、哲学者、スポーツ選手…偉人も魅了した「タラソテラピー」の歴史を紐解く
1882年、日本で「海水功用論」が刊行される
日本でタラソテラピーを導入したのは後藤新平(医師)と考えられています。1882年、後藤新平は「海水功用論」を刊行し、日本で最初の海水浴啓蒙書を広めたんだとか。1890年、赤星研造(東京大学名誉教授)が海療院をオープンしたという資料もありました。
1897年、「海水が血液の代用として機能する」と証明
ルネ・カントン(フランス生理学者)が、犬に血液の代わりに海水を注入するという実験を行いました。一般公衆の面前で行われた実験は成功を収め、多くの人に強烈な印象を残しました。海水を注入された犬は生存させることができたのです。
カントンを「海水狂」と呼ぶ人もいたそうですが、ルイ・バゴ(フランス医師)は賛同し、1899年に温かい海水を用いたタラソテラピー施設を開設。そのほかにもカントンを支持して、タラソテラピーに取り組む人が出現しました。
1914年、国際タラソテラピー協会が設立
タラソテラピーは効果が認められ、1914年に国際タラソテラピー協会が設立されました。しかし、世界大戦によってセンターの多くが崩壊。化学薬品や薬物療法の発展が進み、タラソテラピーの力は忘れ去られつつありました。戦争下の傷病者の治療にはスピードが求められるため、化学薬品を用いた治療が重宝されたのです。以降、タラソテラピーは停滞期に入り、化学薬品が脚光を浴びました。
1950年代、再評価されタラソテラピーが息吹を返す
第二次世界大戦(1939年9月1日~1945年8月15日または9月2日)が終わった頃から、軍人のリハビリなどにタラソテラピーが利用されるようになりました。自然医学が再評価され、ヨーロッパではタラソテラピー施設が次々と誕生したそうです。
1961年、フランスでタラソテラピーが健康保険の対象と認定
1961年、医師にも見放されるような大事故に遭ったルイゾン・ボベ(フランス自転車競技チャンピョン)がタラソテラピーによって奇跡的な回復を遂げたそうです。自転車ロードレースの大会であるツール・ド・フランスを三連覇した英雄の復活に世間は驚きました。
ルイゾン・ボベは自らの経験を生かしてセンターを開設しました。自転車競技者だけでなくタラソテラピーの先駆者としても活躍。この頃、フランスの厚生省はタラソテラピーを健康保険の対象と認定したのです。(1998年(2000年?)で健康保険適用廃止)
海の力に魅せられた人間たちによって発展したタラソテラピー
タラソテラピーにはたくさんの効能が期待されています。なかでも、海水のミネラル組成が、人間の体液や血液と似ているのは有名な話。海は生命の源なので相性が良くて当然です。世界と比べると日本におけるタラソテラピーの活用は遅れていますが、日本でもタラソテラピーを受けられる施設はあります。
また、日本の歴史のなかでも海水で手当てをしていた情報を見つけたこともあります。タラソテラピーという名前がついていなくても、海に囲まれた島国・日本も海の恩恵を受けていたに違いありません。機会があったら、日本の歴史も調べて記事にできたらと考えています。体質改善を考えている方は、ぜひ紀元前生まれのタラソテラピーに注目してみてくださいね。
参考文献