成分に影響!? 製塩の流れを「濃縮・結晶・仕上げ」の3ステップで簡単解説

天然塩をつくる(塩とにがり)

現在、日本ではいろいろな種類の塩が販売されています。塩は見た目こそシンプルですが、とても個性豊かな調味料。海塩、岩塩、湖塩……同じ原料を使っても、製法が違えば成分も変わる。塩は原料と製法の組み合わせで質が決まるんです。今回は、製塩のおもな工程を3ステップに分けて解説します。

①濃縮 海水の塩分濃度を高める

神奈川県七里ガ浜の海

日本では、岩塩も湖塩も採れないので、昔から海水から塩を作る方法が開発されてきました。製塩の流れの最初のステップは、海水から高濃度の塩水(かん水)をつくる「濃縮」塩分濃度約3~3.5%の海水を濃縮して、塩分濃度を約6~20%にしてから結晶させるのです。おもな濃縮の方法は次の通りです。

・天日
太陽熱や風力などで海水を濃縮する方法。揚げ浜式塩田、入浜式塩田、流下式塩田などの様式があります。天日製塩は燃料が要らないので世界的には広く行われていますが、日本は高温多湿な気候のため天日に向きません。塩専売制度により塩田が廃止された過去があり、塩専売制度が終わった今でも塩田確保が難しいのが現状です。国産の天日製塩はあまり多くありません。

・逆浸透膜
水以外の物質を通さない膜を使って海水を濃縮します。海水に圧力をかけて行いますが、装置によっては薬剤を使用することがあるそうです。

・イオン膜
海水中のナトリウムイオンだけを集めることで、ナトリウム純度の高い濃縮海水を得る方法です。電気エネルギーを用いるため、天候に左右されることがなく、広い塩田なしで濃縮できます。重金属を取り除けるため海水から安全な塩が採れるといわれる一方で、ナトリウム以外のミネラルまで取り除かれることを心配する声も……。

・溶解
再製加工塩を製造するときや岩塩を溶かして取り出すときに使われる方法。塩を真水や海に溶かし、異物を沈殿除去しながら海水を濃縮します。

・浸漬
藻塩をつくる工程。海藻を乾燥させ、そこに海水をかけ流すという作業を繰り返しながら海水を濃縮します。日本で最も古いとされる濃縮方法だそうです。

・平釜
海水を非密閉の平釜で加熱蒸発させて濃縮する方法です。燃料を大量に消費するのがデメリットですが、設備投資が少なく済み小規模から製塩できます。

・立釜
海水を密閉した釜に入れ加熱して濃縮する方法。減圧して沸点を下げて行うので燃料を節約できる利点があり、大規模生産に適しています。

②結晶 塩分濃度を高めて結晶化

天然塩をつくる(塩とにがり)

濃縮海水(かん水)の塩分濃度をさらに高めて結晶化させていきます。カルシウムやナトリウムなど成分によって結晶化する濃度や温度が異なるため、どこまで結晶化させるかによってミネラルバランスが変わります。味わいにも影響する大切な工程。結晶後には「にがり」が残ります。

・天日
太陽と風の力だけで結晶させる方法。海外では屋外の広大な塩田を使いますが、日本ではハウスの中に濃縮した海水を注いだ小さな箱(結晶箱)を並べて結晶させる方法などがあります。ゆっくり時間をかけて結晶化するので、粒が大きくフレーク状の塩ができやすい製法です。

・平釜
非密閉の釜に入れて煮つめて結晶させる方法。ぐつぐつ沸騰させると細かい結晶、沸騰させないで加熱すると大きめの結晶に仕上がりやすいなど、釜の形、加熱方法などで結晶の形が変わります。

・立釜 
立釜(真空蒸発缶)で加熱蒸発して結晶させる方法。高圧缶から低圧缶まで複数の縦長の缶を用意し、高圧缶の蒸気を低圧缶の熱源にします。水蒸気の熱を使い、濃い塩水から水分を蒸発させて塩の結晶をつくるのです。蒸発した水蒸気を再利用するため、効率よく結晶化。大規模生産に適していて、日本ではイオン交換膜と併用して使用されることが多い。

・採掘
天然の岩塩や湖塩を掘り出す方法。不純物が少ない塩はそのまま食用されます。岩塩の場合、土壌の影響を色濃く受けるため、鉄分や硫黄など土地の成分を含む塩が採取されます。

・噴霧乾燥 
温かい部屋のなかの高いところから温風とともに濃縮海水を噴霧し、瞬間的に水分を蒸発させる方法。にがりを含んだままパウダー状の塩になります。

・加熱ドラム
熱したドラム状の金属板に濃縮海水を噴霧し、瞬間的に水分を蒸発させる方法。結晶形成する時間がないため、にがりを含んだままパウダー状の塩に仕上がります。


南條 ゆみ

大阪出身、東京在住。事務職を経てフリーランスライターの活動開始。食や健康の記事を担当するなかで、体にやさしい暮らしについて模索を始める。自身の体調不良と向き...

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