海水中 約95%を占める「海洋深層水」 世間から注目される3つの特性とは?
「海洋深層水」と聞くと、なんだか良さそうなイメージ。海洋深層水の化粧品やミネラルウォーターなどが販売さていれるように、ほかの商品との差別化に「海洋深層水」というワードが使われています。海洋深層水とは一種のブランドのような役割を果たしているのです。今回は、海洋深層水がなぜ注目されるのか海洋深層水のメリットをご紹介します。
世間から注目される海洋深層水の3つの特性とは?
一般的に深水200m~300mよりも深いところにある海水のことを海洋深層水と呼びます。日本でも高知県、沖縄県、富山県、神奈川県、静岡県などで深層水がくみ上げられているそうです。たとえば、駿河湾に「黒潮系深層水」「亜寒帯系深層水」「太平洋深層水」の3種類の海洋深層水が存在するように日本でも海洋深層水は取水できるのです。
海は横の動きに比べて縦の動きが小さいため、表層水(浅いところの海水)と深層水(深いところの海水)が混ざりづらい。そのため、海洋深層水には「低温安定性」「清浄性」「高栄養性」の特性があります。この3つの特性が海洋深層水に注目が集まる理由です。今では水産業に留まらず、加工食品、医療、美容、健康などさまざまな場面で海洋深層水は活用されています。
①低温安定性:気温の影響を受けず、年間低温状態で細菌が少ない
海水表面の表層水は気温の影響を大きく受けます。気象庁のデータによると真夏では30度前後まで海面温度が上がるそうです。しかし、海洋深層水は1年を通じて10度以下の水温で安定しています。水深1000m付近では約4度といわれるほど冷たいのです。
食品を保存するとき、暖かい部屋よりも冷蔵庫で保存したほうが腐りにくい。海でも細菌類は表層水よりも深層水のほうが少ないのです。海洋深層水の細菌類の数は、表層水の10分の1程度ともいわれています。
海は太陽エネルギーにより温められていますが、温められている海水は海面からわずか100m程度だけです。海の深さは平均約3700m。なんと地球上の海水の約95%が海洋深層水なのです。
②清浄性:有害物質の影響が少なくクリーン
安定して低温状態の深層水は、表層水に比べ細菌類が少なく有機物がほとんどないため表層水に比べると綺麗な状態です。表層水にはたくさんのプランクトンがいますが、海洋深層水は暗いので植物プランクトンにとって生きづらい環境。それに伴い、植物プランクトンを食べる動物プランクトンも少なくなり清浄性が保たれるのです。
表層水や土壌や川ではダイオキシンや環境ホルモンが発見されています。しかし、深海にはほとんど有害物質が見られないそうです。タンカーなどの油流出事故による汚染の影響が少ないのも利点です。
③高栄養性:表層水よりも豊かな栄養分が残っている
深層水には、さまざまな栄養塩類やミネラル成分がバランスよく含まれているそうです。その量は表層水の数倍~数百倍とまで考えられています。表層水にいる植物プランクトンは光合成するときに、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分を使用しています。一方、海洋深層水は太陽光が届かないため光合成がほとんど行われません。その結果、海洋深層水の栄養は消費されず残っているというわけです。
ただし、飲用水として海洋深層水を選ぶ場合は注意が必要です。海洋深層水は硬度が高い商品が多く、口当たりに違和感があったり、お腹が下しやすくなったりするのです。内臓に負担がかかりづらい低硬度の商品を選ぶなど工夫する必要があります。海洋深層水の特性を考慮して活用しましょう。
海洋深層水で作る塩のクオリティーは?
冷たく綺麗で栄養が豊富な海洋深層水は、さまざまな分野で活用されています。温度差発電、冷房作物、海産物の栽培、ミネラルウォーターのほか、タラソテラピー(海洋療法)でも利用されています。あなたは、海洋深層水で作られた塩が販売されているのを見たことはありますか?
汚染物質や有機物が少ない海洋深層水。表層水で塩を作るよりも、海洋深層水で作ったほうが綺麗な塩に仕上がるそうです。製塩方法によって成分は異なるでしょうが、海洋深層水で作った塩は不純物が少ないといえます。
永遠に綺麗という保証はない。海を汚さない生活を
地球の約4分の3は海。さらに、その約95%が海洋深層水です。海洋深層水は綺麗で安全。海洋深層水は水循環によって常に再生されるため、永久に使い続けることができる資源といわれています。しかし、綺麗だからといって海を汚していい理由にはなりません。汚染が進むと海洋深層水からも有害物質が見つかる日がくる可能性があります。
地球の海水は全部繋がっています。そして、ゆっくりゆっくり回っています。自然の恩恵への感謝を忘れてはいけない。安全な資源を失わないためにも、資源を大切に使い環境にやさしい暮らしを心がけたいものです。