過度な減塩に要注意! 日本人こそ塩を摂るべき4つの理由

日本と世界の国旗

日本は外国と比べて食塩摂取量が多いといわれています。さらに厚生労働省が示す食塩摂取量の基準値が年々減らされており、メディアや社会の風潮から減塩信仰が広がるばかり。実際に減塩を心掛けている人もたくさんいるでしょう。しかし、日本人にとって塩は貴重なミネラル源です。ミネラルが欠乏するとあらゆる病気を招きます。今回は、塩が日本人に必要な理由をお伝えします。

①食事だけでは足りないミネラルを補う必要がある

稲作で実った米

日本で塩が使われるようになったのは、縄文時代の終わりから弥生時代にかけてだそうです。日本人が塩を使うようになったきっかけは、農耕の始まり。縄文時代では主に狩猟採集で暮らしていたので、肉食動物と同じように動物や魚介類を食べていました。動物の肉や魚介類には塩分が含まれているので、食事を通してミネラルを補給することができたのです。

しかし、稲作や畑作が始まると主食が植物である米や粟になりました。動物を食べる量が減り体に必要な塩分が足りなくなった結果、日本人は海水から塩を摂るようになったと考えられています。

日本の食卓

欧米は日本よりも肉などの動物性食品の摂取量が多いそうです。肉には塩分が含まれています。肉から塩味を感じないため不思議に思うかもしれませんが、塩分は肉を食べることで補給できるのです。このことから、欧米の人たちは、食事を通して得られる塩分が多いと考えられます。

日本人は昔から肉よりも植物性食品を多く食べる習慣がありました。野菜や果物などの植物性食品に多く含まれるカリウムには、塩の主な成分であるナトリウムを体外に流出させる働きがあります。そのため、塩でナトリウムを補う必要があるのです。単純に他国と食塩摂取量だけを比べるのはなく、食文化の影響を考慮するべきでしょう。

②日本の水道水にはミネラルが少ない

水道水とにがり

軟水、硬水という言葉を聞いたことはありますか? 日本の水道水は軟水で、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル含有量が少ない水です。一方、土中にミネラルが多く含まれているヨーロッパの水道水はミネラル含有量が多い硬水です。そのため、食事だけでは不足しがちなミネラルを水分と一緒に摂取できます。

日本人は、水道水からミネラルをあまり得られないので塩が必要。ナトリウム濃度が高い傾向がある岩塩よりも、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルのバランスがよい海塩を摂ることが望ましいと考えられます。「ミネラルウォーターを飲めばいい」という意見もありますが、ミネラルウォーターの質を見極めて選ばなければなりません。ミネラルウォーター類は、ミネラルの有無、製造方法の違いによって区分されています。見分けるのが難しい場合は海塩がおすすめです。

③日本の気候に塩は欠かせない

塩と花

日本の夏は高温多湿。そんな状況で過度な減塩を進めると熱中症リスクが高まります。塩を摂らない状態が続くと、喉の渇きが感じにくくなり脱水症状に陥る場合もあります。また、塩は体温を上げる作用があるため、寒冷地でも重宝されてきた歴史があります。昔、東北の人たちが塩辛い料理を取り入れていたのは、寒い冬に耐えられる体をつくるためという理由もあったそうです。塩不足は低体温を招きます。体温が下がると新陳代謝が悪くなり、免疫力も低下。東北の人たちは、寒さを乗り切るために工夫して暮らしていたのです。

気候に限らず、必要に応じて日本人は塩を摂るべきです。涼しい部屋で静かに過ごしている人と、炎天下で体を動かしている人では塩の摂取量が違って当たり前。厚生労働省が示す「日本人の食事摂取基準」の食塩摂取量の基準に縛られず、体調や環境に合わせて塩を摂るほうが健康的ではないでしょうか?

④塩はほかの食材で代用するのが難しい

色とりどりの野菜や果物

農業で得られる野菜や果物があれば、人間に必要な栄養素のほとんどを摂ることができます。たとえば、炭水化物は穀類やイモ類から、タンパク質と脂質はマメ類から、ミネラルやビタミン類は野菜や果実から補給できます。しかし、ナトリウムは農作物で補いづらい栄養素です。とくに菜食者はナトリウム不足になりがちです。野菜や果物はナトリウムを排出するカリウムが豊富なので、バランスを整えるためにはナトリウムの補給とセットで考えるべきでしょう。

あらゆる調味料を作るのに塩は欠かせません。味噌も醤油も原料に塩を使います。梅を塩で漬け込めば酢(梅酢)が得られますし、塩と油を混ぜれば簡単なドレッシングとして使えます。もしこの世に塩がなければ、今の日本の食文化はなかったかもしれません。塩は日本人の生活と関わり深いものなのです。

塩を摂りすぎたら体が教えてくれる

塩とにがりと水

健康な人であれば、神経質に減塩にとりくむ必要はありません。減らすべきは精製塩の量です。家庭で使う塩を購入する際は、精製塩を避けること。また、多くの加工食品に精製塩が使われているため、加工食品にできるだけ頼らないようにするか、信頼できるメーカーから購入してください。

もし塩を摂り過ぎたとしても、人間は喉の渇きに気がついて水が欲しくなります。これは、体内環境の調整機能が働いている証です。腎臓が正常であれば、尿とともに余分な塩分は体外に排泄されます。もちろん、常識を逸した塩の摂り過ぎは健康を害します。でも、普通に生活をして普通の食事をする程度では、それほど心配は要らないのです。

むしろ、摂取の目安量を数字で簡単に線引きすることに疑問を感じます。体質、環境、ライフスタイルが違うにもかかわらず、全員に同じ量を推奨するのに違和感があるんです。外国の食塩摂取量が〇gだから、日本も〇gを目指す。国が決めたから減塩する。という考え方ではなく自分軸で選びませんか? 日本の食文化や気候を踏まえたうえで、体と相談しながら暮らしに塩をとりいれてくださいね。

南條 ゆみ

大阪出身、東京在住。事務職を経てフリーランスライターの活動開始。食や健康の記事を担当するなかで、体にやさしい暮らしについて模索を始める。自身の体調不良と向き...

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