アニマルウェルフェア(動物福祉)とは? 動物が健康的に暮らせる畜産を考えよう
わたしたちが食べている肉、卵、乳について動物の目線で考えたことはありますか? スーパーに並ぶ畜産品。見た目からは分かりませんが、牧場によって飼育方法は異なります。動物たちは幸せを感じて過ごしているのか……今回はアニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方を紹介します。
アニマルウェルフェア(動物福祉)の考え方
アニマルウェルフェアでは、家畜がストレスなく健康的に生活する畜産を目指します。動物は、生まれてから死ぬまで動物本来の行動をとることができ、幸せでなくてはならない。動物たちが、自由に動き回り仲間と遊ぶことができて、飢えることなく健やかに。畜産動物だって幸せになる権利があるのです。
日本のアニマルウェルフェアは遅れている
海外ではアニマルウェルフェアの考えが浸透しつつあるそうです。しかし、日本ではアニマルウェルフェアへの取り組みは胸を張れるようなものではありません。実際、日本の畜産業では以下のようなケースが多いです。
・生涯を狭いケージで身動きできないまま過ごす。
・まだヒヨコなのに、卵を産めないオスは屠殺。
・人間の都合で、身体が大きくなるようにホルモン剤を打たれる。
・牛乳をたくさん出させるために注射され、胸がパンパンになり乳腺炎。
このような状況は動物にとって幸せと言えるのでしょうか? もし自分が同じような扱いを受けたらどんな気持ちになりますか? 最期には食べられてしまう運命だとしても、やっぱりそのときまでは幸せに暮らしたいと思いませんか?
アニマルウェルフェアは生物学的にもメリットが多い
アニマルウェルフェアって哲学・倫理的な話? と思う人がいるかもしれません。もちろん倫理的な面はありますが、各国でアニマルウェルフェアが注目されるのは、生物学的な側面が大きいようです。
研究の結果、ストレスフリーな家畜のほうが高品質な畜産物に育つと分かったのです。
・自由に動き回れる環境があれば、動物たちの筋肉が引き締まる。
・ストレスフリーだから寿命が伸びる。
・鶏はたくさん卵を産むようになる。
・広いスペースがあれば、掃除がしやすく衛生面が良くなる。結果、病気が減る。
などなど、効率的な事情を加味してもアニマルウェルフェアには取り組むメリットがあるのです。畜産物は、動物の命でありながら、値段シールが貼られ工業製品のように生産・出荷されています。大量生産して安価で売るために、狭い空間に多くの動物を閉じ込め、密で不衛生な環境での飼育しているのが日本の現状です。悪い環境で育った動物より、心地よい環境で育った動物のほうがよいのは少し考えれば分かることだと思います。
なぜ日本ではアニマルウェルフェアが浸透しないのか
現在、海外ではアニマルウェルフェアが広がっています。アニマルウェルフェアの目標を掲げて取り組む国も増えてきました。しかし、日本ではあまり進んでいません。(もちろん動物にやさしい牧場もあります。)日本のアニマルウェルフェアが遅れる理由のひとつは人手不足問題です。広々した牧場を管理したり、動物たちのケアをしたりする人が少ないため、動物たちへの手厚いお世話ができないのです。
そのほか、日本人の「国産ブランド」主義の影響もあるといいます。日本では国産という付加価値があれば値段が高くても売れるのです。また、日本は畜産物を輸出することが少ないので、国内で生産と消費が完結するため世界と闘う機会が少ない。
一方、輸出が盛んな国の畜産物は世界で取り引きされるため、世界で通用するクオリティの畜産を目指さないと売れません。アニマルウェルフェアを無視した畜産物は世界では通用しないのです。
アニマルウェルフェアのために消費者ができること
わたしたち消費者にできることは、選択して購入することです。アニマルウェルフェアを配慮した牧場の畜産物を購入することで、アニマルウェルフェアを応援できます。しかし、アニマルウェルフェアに取り組んでいるかどうか見分けるのは難しい。なぜなら売られているお肉に飼育方法の記載がないからです。
それでも卵には「平飼い」と書かれているものがあります。平飼は、のびのび育った目安になります。そのほか、PHF(ポストハーベストフリー)の表示は飼料の質を把握するのに役立ちます。信頼できるお店で購入したり、宅配サービスを利用したり、いろんな方法を調べてみてくださいね。